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NO16<留学を終えて>
秋の気配が感じられ始めた日曜日、帰国を前に、通い慣れた道をドアムネイ教会ミサに出かけました。オリジナル修復に参加した教会です。修復中も教会活動は続けられています。バリトンの賛美歌が響く中、修復櫓の間を埋め尽くす程の人々が集い祈っていました。老婆が私にパンをそーっと手渡し十字を切ります。
18世紀から今日まで、生き続けている教会の修復の一端を担う事が出来た事に胸が熱くなりました。
ブカレスト美術大学・壁画修復科に留学して1年の月日が流れました。
大学側の特別な計らいで美術概論からフレスコ、イコンの制作。修復実技実習に始まり実際の教会堂修復のディプロマを頂くまで、ルーマニア第一線の教授陣にマンツーマンの丁寧な指導をしていただきました。現地で学ぶ修復学は書籍の中で想像していたものとは精神面で大きく違っていました。それは、宗教心なのか、自国の文化を愛する情熱の違いなのか、ブカ美大の教授、学生は、時間と労力のいる修復作業を真摯な態度で楽しそうに行っていました。19世紀中頃から伝わる修復理念の一節が蘇ります。
「修復保存に携わる者は、より良いものを探求し続け、本物で美しく価値あるものを保存し、過去に学び得られたものの記念として、遺産を命あるものとして保つ努力を続けなければならない。
現代生活の質を高め豊かにするための修復保存という仕事は、しばしば献身的努力が必要とされることが多い・・・。」
ルーマニアの修復に携わる多くの人々に出会い、彼らが自国の文化に誇りを持ち、正にこの理念を実践している姿にあらためて感動しました。
2003年 8月
佐藤 幸代
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